家族葬エピソード97:「最後だと思うとなんとなく眠れなくて」

故人様は70代の奥様でした。

祭壇は奥様が大好きだった赤いお花を中心に、色とりどりの花でいっぱいです。

お棺の中にはお気に入りのお洋服もおさめられていました。
奥様がお好きだった飲み物や食べ物、小説本も用意されていたため、お棺の横に飾らせていただきました。

「お別れの時、こちらも一緒にお入れしましょうか?」
と尋ねると
「これも棺の中に入れてあげていいの?良かった」
と、とても嬉しそうでした。

少人数でのお見送りですが、とても賑やかに思い出ばなしをされ過ごされていました。

葬儀の日の朝、ご挨拶にうかがうと、イスに腰かけ少しぼんやりとされていました。
「ゆっくりやすめましたか?」
と尋ねると
「ゆっくりできました。でも、最後だと思うとなんとなく眠れなくてね...」
と。

悲しい思いの中、奥様の為に奥様の大好きだった物を、出来るだけ沢山手向けて送り出してあげたかったのだな、と、ご家族様の暖かい気持ちに私も胸が熱くなりました。


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家族葬エピソード96:「息子様からのご挨拶」

今回、備庵牧の式場をご希望の方でした.

5年程前に、お母様も同じ式場でお式をさせて頂きました。

今回は、お父様のお見送りとなりました。

ご家族様は、一人娘様そのご主人と故人様もずっと一緒に暮らしていたようでした。
喪主は、娘様のご主人がつとめられました。

とても物腰の柔らかい喪主様。
通夜の開式前は、ずっと気丈に振る舞っていらっしゃいました。

通夜も滞りなく終わり、最後に喪主様より謝辞がありました。
ご参列の方々は、ご友人との方が数名と、後はほぼ御親族様でした。
皆様にお礼のご挨拶...
故人である、義父様と仲が良かったのでしょう、
一緒にお酒を酌み交わした事...
よく故人様が言われていた言葉...
途中、喪主様は涙が溢れ出し......
まぶたから流れ出す涙を必死に我慢しながら、ぐっと上を向く喪主様の姿に聞いている自分も涙が出そうになりました。

途切れ途切れの言葉でご挨拶をされておりました。
お席の方からも泣いているのが聞こえました。

葬儀の日も、家の方とお寺様の結びつきが強かったせいか、読経を上げているお寺様も途中から泣きながら読経を上げていました。

葬儀も終わり、最後、お柩にお花を入れる際も、お寺様もご一緒にされました。
故人様のお好きだった食べ物、お酒や煙草など皆様の手で入れてあげました。
ご出棺の際、喪主の方は一度、車に乗車されたのですが、再度降りて、お見送りしてくださっている方々、お寺様に深々とお辞儀されお礼言われておりました。

とても礼儀正しい喪主様でした。

こんな喪主の方に、奥様は勿論ですが、故人様もずっと大切にされてきたのだと改めて感じました。

夏空が眩しい中のご出棺となりました。

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家族葬エピソード95:「赤いカーネーション」

70代の故人様、釣りが趣味でお柩の中には釣りに行かれる時は必ず着ていたベストも一緒にお納めしました。
お通夜は儀式的なことはされずご遺族様だけでゆっくり過ごされておりました。

奥様はお柩の近くに座られて口数少なく故人様との最後の夜を過ごされたそうです。
お式の当日にお伺いするとお柩の傍に寄り添い
「寂しいねぇ」
と、こぼされる奥様とその背中を支え
「そうだね、母さんは大丈夫?キツくない?」
と声をかけられる二男様のお姿がございました。

奥様もあまりの体調が良くないらしく
「私もすぐに行くわね」
と故人様に話しかけられると、長男ご夫婦が
「そんなことないよ。お父さんにはもうちょっと待ってて貰おうよ」
と励ますお姿に胸が熱くなりました。

たくさんのお花がお柩に納められていく中、奥様が
「赤のお花を顔の近くに置きたい、あの人赤が好きだったから」
と赤いカーネーションをお顔の近くに添えられて最後のおわかれとなりました。

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家族葬エピソード94:「この黒いのが一番伯母のイメージにあうかな?」

今回お手伝いさせて頂きましたお式の故人様は学校の先生をされておられた93歳の女性でした。
喪主様は故人様の妹様の子供、姪御様でした。

県外からお一人で帰って来られ故人様に付き添っておられました。
まだ誰もいらっしゃらない式場のお棺の所に行かれ、顔を寄せてひそひそ話をしているかのように、時々ハンカチで目元を押さえながら長い間お話されておられました。
まるでお一人でいらっしゃる故人様を心配しているかのような感じに見えました。

故人様のイメージにあうお骨壺を選んであげたいとお申し出があり予め選んで頂いた3つのお骨壺を見て頂きました。
故人様のお写真を見つめまるで会話をされているかのように、1つ1つ丁寧に確認されながら
「どれにしようか迷ってしまいます」
と、悩んでおられました。

「写真の洋服はとても華やかなんですけど、伯母の着ていた物は黒い着物、黒いスーツが意外と多くてびっくりしたんですよ。
この黒いのが一番伯母のイメージにあうかな?
やっぱりこれにします」
と、決まった事でホッとされたようでした。

「これ」
と、決められた後にお棺の所に行かれ先程と同じように顔を寄せて
「伯母ちゃん、黒好きだったみたいだから黒にしたよ」
と、報告されており故人様の事を大切に思われていたんだなと感じました。

お式での喪主様のご挨拶で、故人様は学校の先生をしていたこと、綺麗で、頭がよく、お洒落で格好よくとても自慢の伯母様だったとお話されました。
喪主様のお母様が亡くなられた後母親がわりのように面倒みてくださり、良く喧嘩もしたが大好きだった。
お互い支えあってきたと涙を流しておられました。

お写真のイメージの鮮やかなお花を溢れるくらいたくさんお棺に入れて差し上げ、
喪主様が最後に言われたお別れの言葉が、
「伯母ちゃん、ありがとう」
でした。

ご出棺の際、泣いて赤くなった目で
「お世話になりました。ありがとうございました」
と、言って頂きご満足いただけたお見送りができ、私共も晴れやかな気持ちになるお式でございました。

喪主様も伯母様とのたくさんの想い出のを思い出され、逢えなかった時間を1つ1つ埋めるようにたくさんお話が出来たのではないでしょうか。

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家族葬エピソード93:「私達2人で見送ります」

故人様とご一緒に、喪主をお務めになる長男様と長女様はおみえになりました。

「私達2人で見送ります」
喪主様は決心されているようにそうおっしゃいました。

控室があることをお伝えしても片時も故人様の側から離れず、ただただ、お二人で静かに故人様の近くに座っておられました。

(なにかあったのかな?)そう思いながらもお尋ねする事ができず、お茶を出しさがりました。

しばらくして、準備のため式場を訪ねると、喪主様は変わらず故人様の側にいらっしゃいましたが、長女様の姿がみあたりません。

「失礼いたします。ご準備をさせていただきます」
とご挨拶すると、先程までの頑なな様子から変わり、とても柔らかい表情で、
「お願いします。今から数人来ますので、買い出しにいってます」
と言われました。

それからは、せきを切ったかのようにお話しをされはじめました。

「お棺の中に出来るだけ沢山お花を入れてあげたいんや。
でも、来てくれてる人にも花束をあげたい。
大丈夫かな?」

「返礼品、最初に言った数より増やしたいけど間に合うかな?」
と。

ご供花は
「お棺の中に沢山入れてあげたいから」
とご兄妹2人であげられたお花でした。

本当は沢山の方に参列していただきたかったのでは、と、お二人のご様子をみて感じました。
思いが届き、親族の方々がお集まりいただき、故人様をお見送り出来たこと、本当に良かったと思いました。


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家族葬エピソード92:「僕はじいちゃんの横顔を見て育った」

故人様は自治会長を務められたこともある程、周りを明るくし町内の方々にも慕われ、心根のお優しい方だったとおうかがいしました。

故人様の胸元にはチョコレートがいくつか納められており
「チョコレートお好きだったんですか?」
と奥様におうかがいすると、
「そうなのよ~、とっても好きでね」
と目を細め嬉しそうに笑みを溢されました。

遺族控室やロビーでは小さな曾孫様方が元気に走り回り、とても賑やかな雰囲気の中、思い出話に花が咲き談笑されるお姿や、静かに想いを馳せられているお姿、故人様とお話しするように声を掛け涙されるお姿など、みなさま思い思いにお過ごしになっておられました。

ご葬儀の間、小さな曾孫様方は落ち着かずじっとしていられない様子でしたが、ご焼香の際には
「ボクも行きたい」
と待ちきれない様子で、おひとりおひとり親御様とともにご焼香され手を合わせられました。
お式が始まるまで賑やかに走り回っていた姿とは反面に、一生懸命にご焼香される姿に感慨深いものがありました。

喪主はお孫様がお務めになられ、お式の終わりにご挨拶をされました。
故人様との思い出を言葉に出そうとしますが、たくさんの思いが込み上げるようで涙で言葉を詰まらせた喪主様。
しばらくの間、皆様あたたかい目で見守っておりました。
「じいちゃんは父親代わりのように育ててくれました。
じいちゃんはいつも優しく、じいちゃんからは一度も怒られたことがありません。
『親の背中を見て育つ』と言いますが、僕はじいちゃんの横顔を見て育ったと思ってます」
と、故人様との思い出を涙を堪えながらゆっくり、ゆっくりとお話ししてくださいました。

最後には
「曾孫たちが元気で騒いでた声が届いていると思います。じいちゃん、今までおつかれさま」
と故人様の方を向かれ、お声を掛けられました。

喪主様の絞り出すようなお言葉に、ご参列された方々が涙されるお姿が見られました。

最後のお別れの時間では、祭壇のお花をすべて入れていただけるようスタッフにて切り花にさせていただき、皆様の手でお柩の中へ手向けていただきました。
奥様はたくさんのお花を手に抱えるように持たれ、微笑みながら
「花も大好きやったんよ」
と教えてくださいました。

「花がたくさん入って嬉しいやろうなぁ」
と呟かれながら皆様と一緒に故人様のお顔まわりからお足元まで、お柩から溢れんばかりにお花でいっぱいにされご出棺となりました。

今のこのご時世もあり、ご遺族・ご親族様全員が揃われることが少ない中、みなさまお揃いになりお見送りすることができて故人様はとても幸せな方だなと思いました。


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家族葬エピソード91:「お父さんが呼んでる気がして」

「お父さんは職人気質で頑固だったんだけどね...。」
ぽろぽろ涙を流しながら話しかけてこられた故人様の奥様。

葬儀の日の朝、まだ職員しかいないひっそりとした式場に、おぼつかない足取りで一人で歩いて来られました。

片足が思うように動かず、昨夜は階段の上り下りもリフトを使い、歩行もお孫さんに介助されながらがやっとのご様子でした。

驚いて駆け寄る私に奥様は必死につかまり、
「お父さんの所に行きたいの」
そうおっしゃいました。

一緒にご主人様の側まで行き、お棺の中に眠る故人様を見つめながら奥様はゆっくりと話し始めました。

「夜中に何度もここに来たのよ。お父さんが呼んでる気がしてね」と...。

更に驚く私をよそに、一緒に出かけた時の事、お孫様が産まれた時の事など、懐かしげに微笑みながら、しばらくおはなしをされていました。

その思い出ばなしには、全て『お父さん』が登場し、お二人がとても仲良く、愛し愛されていたんだなと感じました。

お式が始まり後方から式場全体を見回すと、沢山のお孫様とひ孫様。

今はまだお辛いでしょうが、これから先、この皆様に囲まれて、ご主人様との思い出同様、楽しい思い出をつくっていただけたらいいな...と思いました。

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家族葬エピソード90:「おばあちゃんがとても丁寧な生活をする人だったんですよ」

故人様は100歳というご長寿で喪主様は
「立派な方人やった、厳しかったけどな」
とご遺影のお顔を見つめられておりました。

故人様はとても優秀で面倒見が良く、女学校を卒業後、小学校の先生としてたくさんの子供たちを導いて来られたそうです。
お子様、お孫様にも厳しくそして優しかったとご長女様からお伺いしました。

喪主様の奥様がお参りに来られた親族様へおもてなしをされており、細かく、丁寧にお茶やお菓子の準備などをしておられました。
私もお手伝いをさせて頂き、その時に
「おばあちゃんがとても丁寧な生活をする人だったんですよ。
季節ごとに梅干しつけたり、味噌を作ったり、お嫁に行った時に全部教えてもらったんです」
と故人様との生活の思い出を教えていただきました。

甘い物が大好きだった故人様のためにお孫様がおはぎとお饅頭をお供えされました。
お柩の近くには百歳を迎えられたお祝いのお写真を飾られ来られ、ご親族の方たちが
「この時のおばあちゃん可愛い」
「もっと会いに行けば良かった」
とお話されておりました。

最後に喪主様より
「長い間お疲れ様、ゆっくりしてな」
と声をかけられお別れとなりました。

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家族葬エピソード89:「頬にお手を添え、お別れを慈しまれているお姿」

故人様と深い縁をお持ちの方がお見送りのお式でした。

その方はご自身が火葬の申請者になる事が難しく、家屋管理人である大家様へ火葬の申請者をお願いされました。

お式お別れはお一人でされました。
その寂しさや不安からか、私達スタッフに沢山のお話しをして下さいました。

故人様の若かりし頃に出会った事。

お互い別々のお仕事をされていた事。

故人様がどれだけハイカラな方だった事。

タバコの事で言い合いになった事。

そして故人様が危篤になられた朝に、普段見ないカラスを沢山見てしまった事。

お話しを伺っている私も、その人生の物語にハラハラドキドキしてしまう程でした。

お式は一日葬として執り行わさせていただきました。
生前お付き合いの有るお寺様にお願いしてお経をあげていただきました。

お一人でのお別れお花入れの際、頬にお手を添え、お別れを慈しまれているお姿に私も目頭が熱くなりました。

先輩スタッフがお式の準備中や式後、お見送りされた方にとても信頼され、頼りにされている姿を何度も見ることができました。
私もそうなれる様、ご親族様、お見送りの皆様のお手伝いが出来る様に日々精進していこうと思いました。


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家族葬エピソード88:「とても温かいお式でした」

故人様は 80代女性の方でした。

ご納棺から担当させていただきました。
喪主様御夫妻が立ち会ってのご納棺でした。
綺麗にお化粧され、お着替えされた、故人であるお母様...
お2人とも涙を流されて、しんみりとした感じでお母様を眺めていたのが印象的でした。

お式の前にお参りに来られた御親族様に
「とても綺麗になってるから見てあげてください」
と喪主のご長男様がお声をかけていました。

葬儀も終わり、お寺様もお見送りしてくれながらのご出棺でした。

ご一緒にお見送りされた御親族様から
「とても温かいお式でした。ありがとうございました」
と丁重にお礼を言われました。
こういうお言葉をかけて頂くと改めてやりがいのある仕事だと感じました。


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