家族葬エピソード706:「朝、普通に出かけていったのよ」


故人様は80代の男性の方でした。

お迎えにあがり会館に到着した時、奥様はただただ慌てているご様子でした。

「朝、普通に出かけていったのよ」
と、突然だった事を興奮気味におっしゃっていました。
(あぁ...まだ受け止められない現実なんだろう)
と、奥様のお話をお聞きしながら胸が痛くなりました。

続々とお集まりになったご親族の方々も、「どうして?」と信じられないご様子で...
奥様と抱き合い涙を流していました。

お手続きの為、一旦その場を離れしばらくして訪問した時には奥様も落ち着きを取り戻されていました。
ずい分表情も和らぎ、今後の事を色々と質問してくださいました。

少しずつ、準備が進み整っていく式場をみながら、
祭壇のお花に感動されたり、
飾らせていただいた写真を観ながら、
「あ〜やっばりこの写真にして良かった。笑ってるよね」
と、嬉しそうに仰っていました。

お式も滞りなく終わり、お別れの時、奥様は込み上がる気持ちを抑えられず...
お柩に眠るご主人様に語りかけ、両手で頬を包み温められていました。

側で見ていたお子様やご親族様も涙が止まりませんでした。

出棺の時、車に乗り込む奥様から呼び止められ、「ありがとう」と何度も頭を下げられました。
最後に「皆さんにも宜しく伝えてね」とおっしゃっていただき...
少しでも奥様やご親族の皆様に寄り添えた事を嬉しく思いました。

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家族葬エピソード705:「良かったね。お母さん」


故人様は80代の女性の方でした。

喪主を務められた娘様は、
「母はお花が大好きだったから祭壇の花は全てお柩に入れて欲しい」
と、おっしゃっていました。

「沢山お入れしましょう」
と、お話しながらよく見ると遺影写真の背景も淡い桃色のお花でした。

「お写真綺麗ですね」と言うと、
「そうでしょ!カタログみせてもらったときこれがいいと思って!」
「やっぱりこれにして良かったわ」
と、嬉しそうに微笑まれました。

しばらくして、喪主様のご姉妹が沢山の甘味物を入れた袋を手に到着されました。

その手荷物をお預かりすると、
「これお供えしていい?好きだったんよ」と。
「はい。お供えしましょう」とお答えすると、「良かったわ〜」と喪主様にお話しされておりました。

お母様の為にご姉妹が一生懸命お考えになられていて、故人様もお幸せだったのではないでしょうか。

お別れの時にお柩に手向けた沢山のお花とお供え物をご覧になりながら、
「良かったね。お母さん」と涙を拭われていました。

そんなお二人を見ていて私も胸が熱くなりました...


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家族葬エピソード704:「また向こうで逢おうね...お母さん」


お母様のお見送りでございました。

お別れの日の朝。
「母が芋の天ぷらが好きで...柩に入れることできますか?」
と、娘様が袋から取り出されたのはお芋の天ぷらやおにぎりが入った手作りのお弁当でした。
朝、早起きしてお母様のために作られたそうです。
高価な食事よりも心のこもった手料理。
お母様にとって一番嬉しいごちそうのように感じました。

お気持ちにとても感動し、お話しをしていると次第に想いがあふれ涙する娘様。

数年の間仲違いしていたことや最期に会いに行かなかったこと...多くの後悔を胸に抱いておられました。
「もっと話しておけば...」
「もっと会いに行っていれば...」
「もっと...」
「もっと......」
想いのすべてが溢れ出るように、素直なお気持ちが口からこぼれます。

けれど、親って子どもの気持ちが分かっていたりするもの...

素直になれなかったり、遠慮して言えなかった言葉も今なら言えます。

お母様のお顔に触れ、泣き崩れながらもありったけの想いを伝えられる娘様。

きっとお母様も『ごめんね』『ありがとう』とおっしゃっていたと思います。

たくさんのお花と手作りのお弁当を手向けられ、
「また向こうで逢おうね...お母さん」
再会の約束を交わし、ご出棺となりました。

しっかりお別れすることができた、と見せてくださった娘様の笑顔は忘れられません。

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家族葬エピソード703:「不思議なご縁」


「いつも笑顔で陽気な人でした」

故人様は90代男性の方でした。
私が前職の介護士の時に働いていた施設の利用者さんでした。

名前を聞いてもしかして...と思いましたが実際にお顔を拝見させていただきますとあの頃のままでした。
喪主様とお話をさせて頂きましたら、
「そうなんですね!これも何かの縁ですからどうか一緒に見送ってください」
と、暖かいお声かけをくださいました。

施設から持ってこられたお誕生日をお祝いするたくさんの色紙の中に、
私が作った色紙もあり、写真を撮った思い出などが蘇ってまいりました。
私が「オムツ交換やお風呂などで声をかけるといつも笑顔で迎えてくれました」とお伝えすると、
喪主様も「本当にいつも笑顔で陽気な人やったね。明るいだけだ取り柄の人だった」
と、一緒にお話をしてくださいました。

お別れのお花入れではお孫様も駆けつけられ、
「ありがとう、お疲れ様」
と、お声をかけながらお花と折り鶴をお供えされました。

喪主様も、「ずっと寝たきりやったけど、もう向こうで走り回ってるかな。
もう怒らないから甘いものたくさん食べていいよ」
と、お好きだったあんぱんをお柩の中へそっと入れられました。

不思議な縁を感じた暖かなお式でございました。

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家族葬エピソード702:「読売ジャイアンツのぬいぐるみ」


「少しシャイで可愛らしい母でした」

故人様は70代女性の方。花祭壇の中で照れたように微笑む可愛らしい方でした。
可愛い小物が好きだった故人様は長女様にいつも可愛らしいお洋服を着せられていたそうで、
「いつも花柄だったり可愛いワンピースやセーターを着せてくれて友達からは可愛いねって褒めてもらって嬉しかった」
と、長女様は目を細められておりました。

そんな可愛いものが好きな故人様が1番好きだったものはご主人と一緒に応援した読売ジャイアンツでした。
長女様と出かけられた東京旅行では東京ドームに行かれ沢山写真を撮り、
ご自身のお土産に長嶋茂雄選手のぬいぐるみを買われたとお伺い致しました。
とても大切にされており施設に入所される際も連れていかれたそうです。

お別れのお花入れではたくさんのお花とご主人と一緒に行ったご旅行の写真、
ご自身で沢山撮った東京ドームでのお写真と一緒に大切なぬいぐるみをお供えされました。
「お母さん、ぬいぐるみ持ってお父さんに会いに行ってね」
と、長女様が優しく声をかけられてご出棺となりました。


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家族葬エピソード701:「あんたは上から見守っててな」


「頑張ったな、本当に頑張った」

故人様は60代の女性の方でした。6年間病と闘ってこられました。

「いつも明るくてクヨクヨしたところなんて見たことない」
ご親族やご友人は口を揃えて故人様のお人柄についてそうお話されておりました。

女手1つで長女様を育て上げ男性にも負けないくらいパワフルな方とお伺い致しました。
ご遺影写真もキリッとしたお顔に強い女性の美しさを感じました。

病気が見つかりご家族で話し合った際には、
「大丈夫。負けんよ」
と、はっきり仰ったそうでご親族も、
「あの人なら大丈夫。また、すぐに元気になる」
と、思っていたと話されておりました。


回復の兆しが見えたときにはご親族と一緒に旅行も楽しまれたそうで、
「誰よりも張り切って楽しんでいた」
と、お話をしてくださいました。


お別れのお花入れではお顔周りに故人様の人柄を表すような赤や黄色など明るいお花をお供えされ、
お足元までお花で包まれていました。

スタッフが最後のお別れでございますと声をかけると、
長女様が故人様のお顔に触れ静かに見つめられたあと声を上げて泣き崩れられました。

直ぐにご親族様が支えられ、
「この子の事は私たちがちゃんと見てるからあんたは上から見守っててな」
と、故人様に声をかけられ長女様も支えられながら、
「ありがとうございました」
と、お気持ちを伝えられご出棺となりました。

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家族葬エピソード700:「兄弟の絆」


「生まれつき障害があった叔父はたくさん大変なことがあったと思います」

そんな言葉から始まったご親戚のお言葉...
凛々しく写るご遺影写真を見つめられ、
「でも私や他の甥や姪を自分の子供のように可愛がってくれました。いつも人を気遣うひとでした...」
そう目を細められておりました。

ご兄弟がお集まりになられたご葬儀の日はお柩を囲まれ思い出話に花が咲いておりました。
「俺が親に怒られてると兄ちゃんがいつも庇ってくれた」
「私のこともいじめっ子から守ってくれた」
など、心優しく芯の通ったお人柄を感じるエピソードばかりでした。

お別れのとき、たくさんのお花に包まれた故人様の胸にそっと供えられたのはご両親のお写真でした。
「お父さんとお母さんが向こうで待ってるよ。
いつも兄ちゃんのこと心配してたからたくさん話をしてあげてね」
と、声をかけられると周りにいらっしゃったご兄弟が涙を流されており...

「兄ちゃん、ありがとう。ありがとう」
と、感謝の気持ちを伝えられるお姿がとても印象に残っております。


晴れやかな1月の空気の中での...ご出棺でございました。


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家族葬エピソード699:「私たちができること」


故人様は50代の男性の方、長く務められていた会社を早期退職されたばかりで、
ご自宅で突然倒れられ帰らぬ人になられたそうです。

私が式場に行くと故人様のご両親がお柩の傍で静かに過ごされておりました。
高校生の時に家を出られた故人様。
ようやくご実家に帰られ、家族で過ごす久しぶりのお正月になる予定でしたが...
大晦日の夜の突然のお別れとなりました。

お父様は私に故人様についてたくさんお話をしてくださいました。
小さい頃から運動神経が良くて運動会のかけっこでは必ず1位だったこと...
少し気が弱いところもあったけど優しく思いやりのある子供だったこと...
お話されるお父様のご表情はとても暖かかったことを覚えています。

退職されてからはお母様と毎朝散歩をされていて離れていた間の時間を埋めるように、
たくさんお話をされていたそうです。

お花を沢山入れられ最後のお別れの時お母様が故人様のお顔にそっと触れられ...
「もっと一緒に散歩したかったね。私の後ろをそっと歩く貴方が居ないと寂しい」
と、涙を流されておりました。


皆様で合掌をした後お柩の蓋をかけたその時...
お父様が堰を切ったように泣きながら故人様のお名前を叫ばれました。
柩に縋り付きながら泣かれるお姿に私も胸が苦しくなりました。
あまりにも早く、突然のお別れに悲しみがその場を包み込んだ瞬間でした。

ご出棺の際にお父様より、
「正月の早々からお世話になってこんなに良くしていただいて本当にありがとうございます。
ちゃんと送ることが出来て悔いはありません」
と、お言葉を頂き...私たちができることについて深く考えるお式でした。


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家族葬エピソード698:「花火が繋ぐ心の絆」


お通夜が終わり、一段落した頃の出来事でした。

式場ロビーや控え室の壁から、なにやら響き渡る
『ドンッ!!』『...ドォン!!!』という音。
なんだろう?と不思議に思っていると、
「花火じゃない?!」
お孫様のひと声で、ご遺族様もご親族様もみなさま一斉に式場の外へ駆け出しました。

見上げた空には、視界いっぱいに広がる大輪の花火。
空気が澄み切った冬の夜空に咲く花火はひときわ美しく、目の前で打ち上げられる大迫力に寒さも忘れ、
大きな歓声と笑顔が溢れていました。

故人様からみなさまへ贈るメッセージだったのでしょうか...
偶然とはいえ、思いがけない不思議なめぐり合わせを感じていると、みなさまも感慨深く印象に残ったようです。

「お別れの花火や...」
「お父さん(故人様)が見せてくれたんやわ...!」

ふと発せられた声に、一瞬まるで時が止まったかのよう...
花火の音だけが響き渡る中、切なさを滲ませた瞳や表情でじっと夜空を見つめられるみなさまのお姿は、
とても印象的で、今も心に残っています。

花火が繋ぐ心の絆。

きっと、みなさまにとって忘れることのできない日となったことでしょう。


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家族葬エピソード697:「七日七日のお経」


長年務められた仕事を定年退職され、さあ、これから3人で楽しく過ごそうと、
ご家族でお話をされていた矢先、急に倒れられお亡くなりになられた故人様。

「初めてのゆっくりしたお正月をどう過ごそうか、退職金も出たし、ずっと行けてなかった杉の井に、
久しぶりに泊まりに行くのもいいねと、笑顔で話していました」
と、涙がとまらないお父さんの肩を撫でながら、お母様はお話ししてくれました。

私達の葬儀は、備庵であげてな、とお二人は故人様によくお話をされていたそうです。
それを、あの子の葬儀を先に出すはめになるとは...と泣いても泣いても諦めがつかないご様子でした。

最後のお別れの時も、お父さんが泣き過ぎて倒れるのではないかと私達も心配でした。
お母様は気丈にされてお父様をささえていました。

後日、お母様とお話する機会があり「お父さん、大丈夫ですか?」とお聞きすると、
「あれから、毎日毎日二人で泣いてばかりいるんよ...諦めないといけないと分かってるのにね...
なかなか気持ちがついていかないわ」
と、涙しながらお話しされました。

一つ気持ちの支えとなっていたのが、お寺様...
自宅に来てくれて七日七のお経をあげてもらえるのが、唯一の救いだと...

お二人が一日でも早く日常の生活を送れるようにと願うばかりです。


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