家族葬エピソード296:「思い出した『やせうま』」

故人様は90代の女性でした。

「8人兄弟の長女として生まれ、父親の亡き後、故人の母と兄と故人の3人で商売を営み、下のご兄弟達を育ててきました」
喪主である息子様はそうおっしゃいました。

頑張り屋で強く逞しい母。誰もがそう認めるお方だったようです。

贅沢を言わない方だったとのことで、お供え物もたった一つ、【やせうま】でした。

「なんも思い出さんでなぁー!これもやっと思い出したんよ!」
とにこやかに微笑みながら喪主様はおっしゃいました。

「お別れの時、是非このやせうまも持って行っていただきましょう」
と提案すると、
「そうやな!それがいいわ!」
と喪主様は豪快にわらいました。

親族の方々はそんな私達が気になられた様子で、
「なになに?」
とまわりに集まってこられ、話の内容をお知りになり笑いにあふれました。

葬儀がはじまり、喪主様のご挨拶になりました。

「あと3年で100歳という事で残念ではありますが、この歳まで大きな病気もせず、最後は眠るように亡くなりました。
痛いとか食べれんとかも無く、大往生やと思います。」
と言うと、ご兄弟の方やご家族の方々は
『うんうん』
と明るい表情でと頷かれていました。

お別れの時、皆様、最初にお話ししていたのを覚えていらっしゃり、1番に【やせうま】持ってこられました。

ワイワイと賑やかに全員で手向けていき、お葬儀ではありましたが、とても和やかに時間が過ぎていきました。


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家族葬エピソード295:「これからは自分の好きなことを好きなだけやってください」

故人様は99歳。

「家族の大黒柱として、地道にコツコツ生きてきた生涯でした」
喪主である息子さんはそうお話になりました。

普段は寡黙なお父様が、酔うと饒舌になり、戦時中、海外で捕虜になった時の話をよくされていたそうです。

苦労の絶えない一生だったにも関わらず、文句も言わずただ家族の為にコツコツと働いていました。

そんなお父様には皆さま感謝の思いしかなく、喪主様の最後のご挨拶では、
「今まで家族の為にだけ必死に働いてきたんだから、これからは自分の好きなことを好きなだけやってください」
と深々と頭を下げられました。

お別れの時。
故人様が特にお好きだったお刺身と焼酎を切花と共に手向けていきました。

「好きなだけ呑んでいいで!酔って向こうで待ってるお母さんにいっぱい話をしてやりよ」
そう涙ながらにおっしゃる喪主様でした。

出棺の時、小雨のなかの出棺となりましたが、喪主様はじめご家族の皆様はわざわざ私達スタッフの側に来られ、深々と頭を下げてお車に乗りこまれました。

故人様同様、とてもお気遣いされる皆様で、私達も感謝の気持ちでいっぱいになりました。


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家族葬エピソード294:「これから2人でゆっくりと余生を過ごそう」

四十数年間、連れ添って来られたご夫婦。
最初の出逢いは、同じ職場だったそうです。

故人様は68歳の奥様でした。

「結婚をしても仕事は続けたい」
という奥様の強い願望のもと、娘様を授かり、ご主人と共に大切に育んでこられました。
家事、育児、仕事と日々忙しい生活を送られてこられたようですが、娘様の事はいつも大切に想っていらっしゃったそうで、そんな両親をみて育ち、娘様にはしっかりと想いは伝わっていたようです。

通夜式も葬儀式にもご友人や隣保班の方々がお参りに来られました。

儀式の最後の喪主様のご挨拶の際、皆様への感謝のお言葉、そして、定年を迎え、
「これから2人でゆっくりと余生を過ごそう」
と言われていた矢先...奥様の体調不良から病気が発覚した事。治療はしたけれど、昨年12月に入院していた病院から、ご自宅療養にし、最後はご自宅で看取る形になった事。

眠る様に息を引き取られた事。

ご主人も体調が弱く、立っているのも辛そうでしたが、立派なご挨拶をされておりました。

皆様、肩を震わせ涙ながらに聞かれておりました。

最後のお別れの際もゆっくりとお時間を取りお別れしていただきました。

喪主様にはお柩の傍に椅子にかけてもらい、お花を手向けていただきました。

辛い悲しみの中、お身体もきつそうでした。
目を瞑り、何度か呼吸を整えておりました。

ご友人の方々や隣保班の方々もご一緒にお別れをされました。
皆様で沢山のお花を手向けていただきました。

故人様のお人柄が偲ばれるお見送りとなりました。


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家族葬エピソード293:「見栄っ張りだったから」

思い出コーナーに飾られていたのは、故人様が校長先生を勤められていた時のお写真。
楽しみにしていたけれど、叶う事が無かった旅行先のイラストやお写真。
若い頃より国内、国外と旅行を楽しまれていた際のたくさんのお写真でした。

お写真に映る故人様は、どのお姿も格好良くポーズをとられていました。

お写真を眺めていらしたご家族様に
「素敵なお写真ばかりですね」
とお声をかけさせいただくと
「見栄っ張りだったから」
そうおっしゃり少し微笑まれました。
そのご様子に、私も温かい気持ちとなりました。

几帳面で真面目な性格、長い間学校の教諭や校長を勤めあげた故人様。
お棺の中の故人様は在りし日を思い浮かばせる様なワイシャツにネクタイ、スーツをお召しになられていました。
お顔の横には愛読書が置かれていました。

お式前、ご家族様は最後だからと、たくさんのお写真を撮られておりました。

お通夜の際、お寺様より
「私も先生の教え子なんです。
冗談で葬儀の時はお経を頼まれていたんですが本当になってしまうなんて、これも縁ですね」
とお話しがあり、ご家族様からは嗚咽をもらす方もいらっしゃいました。

御葬儀が終わり、お別れのお花入れでは故人様がお好きだったおまんじゅうや、ご家族様からのお手紙をお棺へとお納めしていただきました。

色とりどりのお花に囲まれた故人様は、安らかで少し微笑んでいる様なご表情にお見受けされました。

雪が舞う中のご出棺をお見送りしながら、深いご縁を感じる事が出来たお式だったなと思いました。


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家族葬エピソード292:「むこうで親父、お袋にあったらよろしく言ってな」

今回お手伝いさせていただきましたお式の故人様は73歳の男性の方でございました。
喪主様は、歳の離れた弟様がつとめられました。
「刺身をつまみにビールを飲むのが好きやったなぁ」
祭壇のお写真を見ながら思い出されるようにしみじみとお話ししてくださった喪主様。
故人様のご趣味は釣りだったそうで休みの度に出掛けられては魚を釣ってご自分で捌いて召し上がっておられたとのこと。
皆様にご馳走し、
「美味しい、美味しい」
と、喜ばれるとくしゃくしゃの笑顔で照れ笑いをされておられたそうです。
その笑顔を思い出して頂きたくお供えにはお刺身と、ビールをご準備させて頂きました。
「刺身にビールもあって弟も喜んでるわ。ありがとうございます」
とても喜んでいただきました。

ずっとお一人でおられた故人様は晩年はデイサービスで過ごす時間をとても楽しみにされていたそうです。
職員の方や同じくデイサービスに来られている方とのおしゃべりが嬉しくて楽しいと心待にされておられたとの事でした。
「こう言う時期で施設の職員の方や他の方に来て頂くことが出来ませんでした。
ですがとても物静かな兄だったので沢山の人が来てざわざわした葬儀より、本当に身近な家族だけで見送る家族葬にして喜んでいるのではないかなと思っています。」
喪主様が最後に集まられたご親族様に向けられて言われたお言葉でございました。

お別れの時、祭壇のお花をお柩一杯に皆様で入れて差し上げ、姪ご様達が書かれたお手紙、折り鶴も入れていただきました。綺麗なお花に囲まれた故人様を中心に皆様でお写真を撮られ、
「お疲れ様。むこうで親父、お袋にあったらよろしく言ってな。俺も行くけん」
喪主様の言われたお言葉が最後のお声がけのお言葉となりご出棺となりました。

故人様に近しい方ばかりのお見送り。とても暖かな雰囲気のお式でございました。


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家族葬エピソード291:「長い時を一緒にすごしたぬいぐるみ」

今回お手伝いさせて頂きましたお式の故人様は24歳ととてもお若く、急なお別れとなった男性でございました。
喪主様は、お父様がつとめられました。
「親より先に逝くなんて...」
お一人でお柩のところに立たれじっとお顔を見られながらぽつりと呟くように言われておられました。
そのお姿がとても小さく、弱々しく感じられました。
他県のお寺様が菩提寺と言うこともあり、私共ではお通夜、ご葬儀をせずお別れ式のみ執り行わさせていただきました。

祭壇のお写真は学生時代のお写真でしょうかとても凛々しく、照れたような笑顔がはつらつとしたお写真でございました。
ご家族の方が持って来られお柩の上に置かれた沢山のお供えは、若い方らしくジュースやグミ、チョコレートとお好きだったお菓子がお供えとして置かれておりました。
その中にぬいぐるみも一緒に置かれておりました。
とても古くなっており、だいぶんくたびれた感じのぬいぐるみでしたが故人様と共に小さい時から長い長い間一緒に過ごされ、時には相談相手に、時にはいつも側にいる一番の友達。
故人様がとても大事にされ、心の支えにされていたのがわかるぬいぐるみでございました。

皆様がぽろぽろと涙を流されながら、1つ1つ丁寧に綺麗に並べるようにお花を入れていただき祭壇のお花はすべてお柩の中へ入れていただきました。

「お兄ちゃん、一杯入れちょくけんな。食べてな。全部好きやろ?。」
お柩の上に置かれたお供えのお菓子を妹様がすぐ手の届く所の方がいいと左右の手の所へ入れて差し上げました。
「お兄ちゃん、お父さんとお母さんの所に生まれて来てくれてありがとう。
こんなお母さんでごめんね...また、逢いましょう...」
お母様の言われたお言葉が最後のお声がけのお言葉となり皆様でお柩の蓋をかけさせていただきました。

ご親族様5人でのお見送り。出棺のお車に手を合わせお見送りさせて頂きながらご家族の深い深い悲しみを感じた切ないお式でございました。


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家族葬エピソード290:「じぃじへのお手紙」

式場に入ると、まだ小さな故人様のお孫様が「じぃじへ」と一所懸命にお手紙を書かれておりました。

ご家族様が
「家族だけでお見送りをしたい」
とご希望されご家族葬となりました。

喪主をお務めになられたのは故人様のご長男様でした。

ご挨拶をさせていただいた際、少しお話しさせていただくと
「年始だから家族皆が揃えて良かった。」
と少し安堵されていました。

お棺の上には、故人様がお好きだったタバコや焼酎がご家族様により置かれていました。

お通夜の後は故人様との最後の食事をと皆様でお食事をされました。
翌朝ご挨拶に伺うと、お一人で故人様を見つめる喪主様のお姿がありました。
言葉は発せられませんでしたが、そのお姿は故人様と会話をされている様にお見受けすることが出来ました。
喪主様のお姿に私も胸が締め付けられる思いとなりました。

ご出棺前のお別れでは、故人様がお好きだったと伺っておりましたお刺身をご用意させていただきタバコや焼酎と共にお棺へと納めていただきました。

お棺の中には、お花とお孫様方のお手紙で囲まれた故人様。

「最後だから。」
とご家族様が順番に故人様の頬に触れ、お声掛けをされていました。

最後に喪主様が
「ありがとう」と目を潤ませてお言葉をおかけされご閉棺となりました。

ご出棺後、火葬を終えられ、式場へと戻られての御葬儀でした。

お式後、ご家族様皆様に少しお疲れのご様子が感じられ、
「体調等崩されませんように」
と切に願いながらお見送りさせていただきました。


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家族葬エピソード289:「せめて見て欲しくて」

出来上がった色鮮やかな花祭壇をご覧になり、二男様の奥様は、涙をポロポロと流しながら囁くような声で
「ありがとうございます」
と仰っておりました。

故人様は83歳のお母様でした。

沢山のお花に包まれたご遺影写真。
優しく微笑んでいる笑顔のお写真でした。

「いつくらいに撮られたものですか?」
とお伺いすると
「10年は経ってないけれど...そのくらい前のものです」
と仰っておりました。

祭壇を沢山写真に撮り収めていらっしゃいました。
「長崎に居る親族が、帰って来れないのでせめて見て欲しくて」
と色んな角度から撮られておりました。

両日共に、6名様でのお見送りでした。
通夜の日は、市内でも雪が舞うくらいの寒さでした。

ご家族様が、故人様がお好きだった、干し柿を持って来てくださり、お供えさせていただきました。
末期の水にヤクルト。故人様がお好きだったのでしょう。
果物も大好きだったらしく、メロンやみかん、お酒の入ったチョコレートも一緒にお供えさせていただきました。

「メロンもみかんも、とても好きだったので母も喜んでいると思います」
と大変喜んでくださいました。

葬儀の日も、厳しい寒さの中、雪が降っていました。
儀式も滞りなく終わり、沢山のお花をお柩に手向けていただきました。

ご家族様か折ってくださった、折り鶴やお孫様からのお手紙も一緒に添えていただきました。

ご出棺の際は雪が吹雪いており、雪空の下、私共スタッフ一同、手を合わせてお見送りさせていただきました。

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家族葬エピソード288:「笑顔の別れにしような」

詩吟がプロ級で、全国大会に何度も出場され、仕事一筋で懸命に働かれていた故人様にとって唯一のご趣味だとお聞きしました。
菩提寺のご住職もその事をよくご存じで、通夜のご法話の中でお話されていました。
「真剣で舞をされる有名な方が、故人様の詩吟でなければ舞うことはしない、と頑なに他の方の申し出を断っていたのは有名な話です」
と話され
「すごい方であった」
と尊敬の言葉をご家族に伝えられていました。

「お仕事に関しては真面目で几帳面。
早くにご両親を亡くされ、お祖母様が創められた自営を引き継ぎ苦労もあったようですが、懸命に仕事に励まれていた。その後ろ姿を見て私達は育ってきた」
と、喪主様は昔を思い出しお話されていました。
「仕事から離れれば冗談を言い、とても博学で何を聞いても答えてくれていた」
とお孫様たちもお話されていました。
「じいちゃん、ホントすごかったよな!」
と折り紙をしながら、色々と語り合っていました。
怒った顔は見たことがなく、いつも笑顔で迎えてくれてたこと、タバコの煙で輪っかをつくって遊んだこと、沢山の想い出をお話されている、お孫様たちの顔も笑顔でした。

儀式も終わり最後のお別れへとうつりました。

色とりどりお花と、皆様で折った折り紙、お手紙。
娘様たちからアイスクリームが大好きだったとお聞きし、ご用意させていただき、最後、故人様にたむけていただきました。

最後に喪主様が
「いつも明るかったじいちゃんだから、皆、悲しい別れじゃなく笑顔の別れにしよーな!
」と皆様に伝え、泣かれていたお孫様たちも、涙を拭いてうなずき、故人様に感謝の言葉をたむけご出柩となりました。


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家族葬エピソード287:「いつか、いつか行こう」

今回お手伝いさせて頂きましたお式の故人様は84歳の男性の方でございました。

喪主様は奥様がつとめられました。
学校の校長先生をされていたとの事で祭壇のお写真は校長先生をなされていた当時のお写真を使わせていただきました。
真面目で、几帳面だったと言う故人様。
ですがお写真は硬い感じではなく、柔らかで温かく誰の事も包み込むように微笑まれたお写真でございました。
きっと、生徒さんの事も優しい眼差しで見守られていたのではないでしょうか?
そんな印象のお写真でございました。

先生を退職されてからは旅行に行かれるのを趣味とされておられたとの事。
国内、海外と奥様と旅を楽しまれ、国内旅行では教師時代の同僚に会いに行かれ昔話をされるのをとても楽しみにされておられたとお伺いしました。

「北海道には行ったことがなくて、『いつか、いつか行こう。』って言ってる間に病気になって行けないままでした。」
と、とても残念がられておいででしたので行けなかった北海道の名所、名産写真をプリントアウトしコーナーを作り、故人様の数々のお写真と一緒に飾らせていただきました。

故人様の好物はお刺身と甘いもの。
特にお饅頭がお好きだったとの事ですが、ご病気のため最後に食べさせてあげる事が叶わなかったと奥様からお聞きいたしましたのでお饅頭、大福、どら焼きなどをお供えさせていただきました。

お別れの時、祭壇のお花をお柩一杯に入れて差し上げ、奥様とご長女様が書かれたお手紙、お供え、国内旅行に行かれて撮られたお写真とずっと行きたいと言われていた北海道の名所、名産のお写真も御一緒にお持たせいたしました。
「お父さんありがとう。先に言って待っててよ。」
故人様をじっと見つめながら言われた奥様のお言葉が最後のお声がけのお言葉となりご出棺となりました。

小雪の舞う中のご出発。遠ざかって行くお車に北海道に行きたかった故人様が降らせた雪かもしれないと手を合わせお見送りさせて頂きました。
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